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Naomi's Choice 小柳有美の歌った歌
by Eiji-Yokota
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O Holy Night / Cantique de Noel 「さやかに星はきらめき」

- 1847年 Adolphe Adam + Placide Cappeau / John Sullivan Dwight -
O Holy Night / Cantique de Noel      「さやかに星はきらめき」_c0163399_213326.jpg

讃美歌第二編219番、クリスマス・キャロル

賛美歌は替え歌、異なる歌詞が存在することが多く、この曲もその例に漏れません。
タイトルが「聖夜」となっている訳詞も存在します。
ここでは最も知られている、上記メンバーによるフランス語、英語詞の作品についてお話します。





O Holy Night / Cantique de Noel      「さやかに星はきらめき」_c0163399_21515082.jpg
フランス南部(広義のプロヴァンス地方)に位置するガール県(Gard)、ロケモール(Roquemaure)は、有名なアヴィニヨンの北方にある町です。ワイン業者のプラシード・カポー(注1)は、仕事の傍ら詩作に励んでいました。その時も地元の教会の牧師からクリスマス用の詩作の依頼を受けていました。商用でのパリ行きの途中、カポーは突然、"Minuit , Chretiens"(直訳すれば「真夜中、クリスチャン」)のインスピレーションを受けます。そして、この"Cantique de Noel"(クリスマスの聖歌)の詩が生まれたのです。1847年12月3日のことでした。
詩の内容は救世主の誕生を讃えるものでした。(フランス語歌詞全文はこちら

パリに着いたカポーは、友人のローリー夫妻の知人で、バレー音楽"Giselle"(ジゼル)の成功によって当時絶頂期にあったアドルフ・アダン(注2)に、その詩を託します。アダンは宗教作品を手がけたことはありませんでしたが、カポーの詩に感動し、数日間でカポーの詩に曲を付けます。彼はこの曲を「宗教的なラ・マルセイエーズ(言わずと知れた、フランス国歌)」と呼びました。そして、この曲はその年のクリスマス・イヴにロケモールで初演されたました。
ところが、当時の教会関係者は「音楽性に乏しく全体として宗教的精神に欠ける」とこの曲を批判したのでした。
教会が批判した背景については、アダンがユダヤ人であったこと、カポーが社会主義者であった為とも言われています。
真相はともかく、これにより当時、フランスの教会が公式行事でこの曲が採り上げられることはなくなりました。まさに、普通であれば、この歌は消えゆく運命にあったのです。
しかし、この歌はそうはなりませんでした。
教会の意向にも拘わらず、人々はこの曲を支持し、口伝えで広まって行き、遂に1855年にはロンドンで出版されます。
これを機に、この曲は各国語に翻訳されますが、一番有名なものが、アメリカの神学者で後に音楽評論家の開祖となったジャーナリストのジョン・サリヴァン・ドワイト(注3)のペンによる"O Holy Night"でした。
ドワイトの訳詞は直訳ではありませんが、原詩の精神性を極力再現したと評されています。二人とも奴隷制反対論者と言う共通点もありました。
(英語歌詞の全文はこちら

時代は飛んで、1906年のクリスマス・イヴ。
カナダ人技師レジナルド・フェッセンデンReginald Fessenden(1866~1932)はマサチューセッツ州の自分の無線局から、自らが開発したラジオに乗せて、世界初の「放送」を行いました。ヘンデルのラルゴのレコードをかけた後、彼は自らヴァイオリンでこの歌を奏でた上に自ら歌い、そして、最後に聖書を朗読しました。
つまり、この曲は世界で最初にオンエアされた曲でもあるのです。

1936年、ドワイトの歌詞によるこの曲は、ジョシア・アームズ Josiah Armesが編纂した讃美歌集(Oxford)に収録されます。日本語の「さやかに星はきらめき」もドワイトの歌詞を訳したものです。
教会から当初否定された音楽が、遂には賛美歌として公式な地位を確保し、世界に広がって行く…
なんと素晴らしい「歌力」(ウタヂカラ)ではないでしょうか。
この曲の運命についてはラストでもう一度触れます。

当然のことながら、多くのアーティストがこの曲を採り上げています。
ところで、クリスマス・アルバムをリリースすることはアーティストにとっては、一つのステータスですね。
既にこのブログでも紹介したように、ナット・キング・コール(The Christmas Song 因みにこの曲も収録されています)、フランク・シナトラ(Have Yourself A Merry Little Christmas)、トニー・ベネット(We Wish A Merry Christmas)を始め、多くのスター達が手掛けています。ロック・ソウル時代になっても、プレスリーもヴェンチャーズもフィル・スペクターもビーチボーイズもシュプリームスもカーペンターズもジャクソン5もクリスマス・アルバムをリリースしています。
我がビートルズもファン限定サービスとして、クリスマスには特別なソノシートを配布していました。内容はお遊びでしたが…
そうそう、ちょっと意外でしたが、あのリンゴ・スターもクリスマス・アルバムを作っていましたね。
"I Wanna Be Santa Claus"(Mercury/Island Def Jam 99年)

このブログでは、男性のクリスマス・アルバムの紹介が続きましたので、今日は、新旧3人の歌姫のものをご紹介。
ジャズからはElla Fitzgerald、ポップスからはMariah CareyとCeline Dion。

O Holy Night / Cantique de Noel      「さやかに星はきらめき」_c0163399_0131390.jpg
Ella Fitzgerald"Ella Fitzgerald's Christmas"(Capitol 67年)
エラにはVerve時代にも"Swinging Christmas"を録音しています。そちらは所謂ポップなクリスマス・ソング集で賑やかにやっていました。おそらく、それ故に、敢えてこちらはクリスマス・キャロル主体にして、しっとりと且つおごそかに唄ったのでしょう。スウィングするエラが好きな方には期待外れかも知れませんが。


O Holy Night / Cantique de Noel      「さやかに星はきらめき」_c0163399_0135225.jpg
Mariah Carey"Merry Christmas" (Sony/BMG 94年)
このアルバムからシングル・リリースされた"All I Want For Christmas Is You"「恋人たちのクリスマス」は米国で最も売れた着メロ(2006年RIAA認定)となりました。同曲は、山口智子さんが主演したフジテレビ系列のトレンディ・ドラマ「29歳のクリスマス」の主題歌にも採用された日本は、もとより世界中で大ヒットしました。
マライアはアルバムの中でオリジナルとクリスマス・ソングとキャロルをバランスよく採り上げています。
彼女はこの曲をピアノとオルガンのバッキングで低音から始め、7オクターブの音域を活かし次第に得意の高音で歌い上げていきます。

O Holy Night / Cantique de Noel      「さやかに星はきらめき」_c0163399_0123312.jpg
Celine Dion"These Are Special Times" (Columibia/Epic 98年)
カナダ出身のセリーヌのこのアルバムはケニーGのクリスマス・アルバムに次いで史上2位のセールスを記録したそうです。こちらはジョン・レノンの"Happy Xmas"を含むクリスマス・ソング主体にオリジナル曲(作者とデュエットしている曲も数曲)、クラシックも歌っています。この曲はアルバムの冒頭を飾り、ドラマチックに歌われています。
個人的には、彼女のこの歌唱が一番好きですが、なんとなく彼女最大のヒット"My Heart Will Go On"を思わせる構成ではあります。曲のラスト近く、普通は英語ヴァージョンで"o night divine o night divine"と歌われるところを、セリーヌは"Noel! Noel! O night O holy divine"と原語(フランス語)ヴァージョンを盛り込み、一気に盛り上げていきます。従来から英仏2か国語で歌っている彼女らしい「いいとこどり」ですね。

さて、最後に、この曲をめぐる、この時期に合わせたエピソードを。

普仏戦争(注4)の最中の1870年のクリスマス・イヴの出来事です。
戦場でフランス軍とプロイセン(ドイツ)軍が対峙していました。
その時、突然、フランス軍の一人の兵士が塹壕から飛び出して、この歌(Cantique de Noel)を歌いだしたのです。
その歌に感動したドイツ軍の兵士が今度は自国のクリスマス・ソングである"Vom Himmel hoch da komm ich her"(From Highest Heaven I Come To Tell You)(マルチン・ルター作)を歌い始めました。そしてオーストリアの"Stille Nacht! Heilige Nacht!"(Silent Night , Holy Night)「きよしこの夜」も。
かくて両方の塹壕からそれぞれのクリスマス・キャロルの歌声が流れ、暗黙のうちに24時間の停戦が成立。
束の間でしたが、「平和」が現出したのでした。
実は、これと似たエピソードは第一次大戦下の西部戦線でも、やはり「きよしこの夜」を巡って起こっています。 (上記曲名をクリックすれば該当頁に飛びます)
なお、これを機に遂にフランス教会側が折れて、この曲をミサで採り上げるようになったとの記述も見かけます。

国あるいは地域または宗教間の対立の究極的解決手段である戦争。しかし、そこで戦っているのは生身の人間。個人としては平穏な暮らしを求め、優しさも愛情も持っている人間同士が互いに殺し合わねばならない戦争。個人と国家(団体)の深刻な狭間において、歌は殆ど無力に近い存在に見えます。しかし、全く無力と言う訳でもありません。

かつて音楽によって世界が変えられるかも知れないと若者達が信じた瞬間がありました。
60年代の終わり。連帯と愛が歌われ、戦争反対が叫ばれました。
しかし、結局、それは「幻想」に過ぎませんでした。
ひょっとすると、世界はその時より更に複雑化し、「平和」と言う物差しで測るならば、より悪化しているかも知れません。

この世に現れて何十万年も経ったと言うのに、未だに武力による闘争を放棄・克服できずにいる未熟な人類達。兵器を生み出したのも人類ならば、たとえ、束の間であっても平和を現出させる力を持っている歌を生み出したのもまた同じ人類です。
やはり私は人類の未来を信じたいですし、歌の力に期する思いはあります。
束の間でも平和を起こせたということは、あとはそれを永続させる努力を行えば良い筈なのですから。たとえ、それがどんなに困難なことでも、『希望』は残っています。

こういうことに思いを馳せるのに、クリスマスと言う時期は最も相応しい季節と言えるかも知れません。


****************


注1) プラシード・カポー Placide Cappeau
1808年10月25日- 1877年8月8日 仏、ロケモール出生  68歳

8歳の時、友人のブリントンと遊んでいる時に銃が暴発し右手を失う、ブリトンの父の援助で勉学の道を歩む。パリで法律を学ぶも、稼業のワイン業者に。しかし、関心は専ら詩作に。
後に社会主義、共和主義に傾倒し、奴隷制反対論者でもあった。
姓をClappeau(クラポー)と表示している文献もありますが誤りです。

注2) アドルフ・アダン Adolphe-Charles Adam
1803年7月24日 - 1856年5月3日 仏、パリ出生  52歳
フランスの舞台音楽の作曲家・音楽評論家。
父親はピアニスト・音楽教師・作曲家。
1821年にパリ音楽院に入学、オルガン演奏をボイエルデューに師事。20歳になるまでにパリの劇団一座のために歌を書き、ジムナスト座の楽団指揮者や楽長も務めた。

1825年、ボイエルデューの『白衣の貴婦人』の上演を手伝い、そのピアノ・スコアを作成。
稼いだ金で気軽にヨーロッパ各地を旅行し、ジュネーヴで、後の協力者となる台本作家のスクリーブと出逢う。
代表作はバレエ"Giselle"『ジゼル』(1841年)、オペラ"Si j'étais roi"『我もし王なりせば』( 1852年)。
オペラ座の支配人と対立したアダンは、自ら出資し、莫大な借金を重ねて、1847年にパリで3つ目の歌劇場、テアトル・ナショナル座を開設。
1848年、フランス2月革命勃発。
アダンの劇場は閉鎖に追い込まれ、膨大な借金だけが残る。
一時期ジャーナリズムに戻って、窮地から逃れようとした。
1849年から没年まで、パリ音楽院で教鞭を執る。
パリに没し、モンマルトル墓地に埋葬。

注3) ジョン・サリヴァン・ドワイト John Sullivan Dwight
1813年5月13日 - 1893年9月5日 米、マサチューセッツ州ボストン出生 80歳
ユニテリアン教会の神学者(超越主義者)、ブルック農業集団、ジャーナリスト(音楽評論家)

ハーヴァード大学卒。
ユニテリアン派のエマーソン(「自然」)を中心として始まるロマン主義運動である「超越主義」を奉じた。これは有限なものの内に神的なものの内在認める、神秘的汎神論の思想で、理想主義、個人主義の立場をとるもの。
彼は、ゲーテやシラーに魅せられ、翻訳に努めた。また、ベートヴェンを研究。
41年に「超越主義」の影響下、コミューンによるユートピアを目指して設立されたブルック・ファーム(農業集団)では指導的立場にあった。
47年にブルック・ファーム崩壊。
52年から"Dwight Journal of Music"を発行(~81年)。
クラシック音楽の評論を掲載、音楽評論家の開祖とも目される。
65年 ボストン交響楽団創設に関わる。
76年 ハーヴァード大学音楽教授

多くの文献で、上記のロンドンでこの曲が出版された1855年に"Dwight Journal of Music"に彼による英訳が掲載されたと記載されていますが、Webサイト"A Treasury of Christmas Carols"(後記参照)の管理人は、現存するマイクロフィルムをサーチしたが該当するバックナンバーは見出せなかったとし、この時期に掲載されてはいないと断じています。

注4) 普仏戦争 (1870年7月19日 - 1871年5月10日)
第二帝政期のフランスとプロイセン王国(後のドイツ帝国)の間で行われた戦争。ドイツ諸邦もプロイセン側に立って参戦した為独仏戦争とも呼ばれています。
ナポレオン三世の台頭で国力を増大させていたフランスと、ヴィルヘルム1世とビスマルクによる富国強兵を進めていたプロイセンが、空位となっていたスペインの王位継承をめぐる対立を機に、武力衝突したもの。
この戦争の結果、プロイセンはドイツ帝国の盟主としてドイツ全土を支配することとなり、フランスにおいては第二帝政の崩壊と第三共和政の成立、アルザス・ロレーヌ地方のドイツへの割譲という結果が生じた。

[ 参考文献等 ]
今回も多くの文献、書籍を参照させていただきましたが、その中でも最も示唆を受け、私にとって「発見」があったのは、Web上の"A Treasury of Christmas Carols"でした。以下、関係頁のURL;http://hymnsandcarolsofchristmas.com/Hymns_and_Carols/o_holy_night.htm

 

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