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Naomi's Choice 小柳有美の歌った歌
by Eiji-Yokota
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正調博多節

【 最初に 】
この記事に訪問いただき、ありがとうございます。

特に検索エンジンで来られた皆様には感謝でいっぱいです。
ただ、この記事については、執筆以来半年が経過し、その間、改めて調べたこともあり、大幅な加筆を実施することにしました。
したがって、チェックされた内容と多少違っているかも知れません。
いずれにせよ、時間的・体力的・能力的限界もあり、前回の記事を全て削除して新しい記事を書き直すのではなく、前の記事も活かしながら、部分的・段階的に新しい「記事」を書くこととし、最終的に、これらが完成した時点で前の記事から新記事に移行することとします。したがって、一時的に重複する二つの「記事」が併存しますが、事情ご賢察に上、ご容赦願います。

一応、この記事を読んでから、改訂版の記事に移っていただいても意味は通じるようになっております。
本記事を読んでから「改訂版」に行くか、「改訂版」を読んでから、こちらに戻るかはお任せします。
(どちらからでも、リンクで容易に移動できます)
また、鶴屋南北が作ったCMソング説を追いかけた「番外編」も是非、どうぞ。
→「番外編」(ここをクリック)
*******************************
- trad (伝承歌) -
福岡・博多の民謡、と言うより「お座敷唄」。
歌詞は甚句(7775)形式。

1~3 正調博多節の起源、様々なヴァージョンについて、別項(改訂版 Part1)で考察しています。
詳しくは→ここをクリック

正調博多節_c0163399_1731841.jpg


4.今日の歌詞

既に見て来たように様々な人々がこの曲の成立に関わっており、また、近年レコード、CDに録音されたものも、歌い手や制作者によって様々なヴァージョンが存在していますが、以下代表的なものを掲載します。
福岡と博多名物・名所(一部は既に存在しません)が歌われています。博多をご存知の方もそうでない方も、しばしご覧ください。
(なお、一説には、一部で所謂「隠喩」によるエロチックな描写があるとされていますが、それは皆様の想像力にお任せしましょう)

正調博多節_c0163399_16434812.jpg

 博多帯締め 筑前絞り 歩む姿が 柳腰

 博多よいとこ 朝日に映(は)えて 松と竹とが西東

 博多へ来るときゃ 一人で来たが 帰りゃ人形と 二人連れ

 筑紫名所は 名島に宰府(ざいふ) 芥屋(けや)の大門(おおと)の 朝嵐

 操たて縞(じま) 命も献上 堅く結んだ 博多帯



 博多柳町 柳はないが 女郎(じょろう)の姿が 柳腰

 意気地(いきじ)ずくなら 命も儘よ 博多小女郎の末じゃもの

 恋の中道 なさけの博多 波を隔ての 磯千鳥

 なんの玄海 船底枕 さめりゃ博多の 灯(ひ)が招く

 誰に買われて 行くとも知らず 博多人形の片えくぼ

(なお、あまりに長くなりますので、割愛していますが、まだまだ別歌詞は存在しており、別途、制作年代順に紹介の場を設けたいと思っています)
最後に一つ。彼女は歌う際、上記の1番目と2番目の有名な節をうたっていますが、最後にしっかり自作の一節も付け加えています。

 博多山笠 櫛田の朝に 滾る男衆 夏を呼ぶ


5.テンポ・ルバート tempo rubato

去年の暮、有美さんは突然この曲が気になって、どうにも仕様がなくなったそうです。
思い立ったらじっとしておられない彼女は、すぐさま近所のレンタル屋に飛び込み、この曲を探します。ようやく店員さんの協力で、日本の民謡48曲を収めたCDを見つけ、それを繰り返し聴いたそうです。

前記の通り、邦楽のプロ中のプロが作ったものに相応しく、この曲は門外漢の私でも本当の意味で歌いこなすことが極めて難しいものだと分かります。
この歌は上記歌詞の3番目の「帰りゃ人形と二人連れ」の歌詞(色々解釈の余地がある歌詞であり、その為人気も高い)から「転勤節」とも呼ばれ、「博チョン族」(注6)を歌ったとも言われています。一方で難しい歌の為、ようやく歌えるようになった頃にはまた別の任地へ、と。
ある本には「江差追分」と双璧をなす難曲とも記されていました。
さて、前記の門付け芸への蔑みは別として(「天狗さま」のオリジナル旋律が未詳な今、オリジナリティがどこにあるかは不明ですが)、大正年間に生まれ変わったこの唄が全くハイブロウな楽曲であることは確かです。
また、この曲での三味線は伴奏と言うより、独自の動きをします。主旋律に絡むかと思えば、いつの間にか離れては微妙に異なるリズムと旋律を奏でる様な… なお、調弦は本調子。(注7)
有美さんはこの曲を採り上げるに際して、音楽用語で言う「テンポ・ルバート」(注8)を、ここで多様します。この日(2009年2月7日)の演奏もそうでした。直訳すれば「盗まれたテンポ」。基本的なテンポは崩さず、しかし、音符の長さを変化させる(多くはスロー乃至ノー・テンポに近づける)演奏法です。
単純にノンテンポで歌いだし(特にヴァース部分)を歌い、やがてインテンポに入ると言うパターンはよくありますが、必ずしも彼女はそのようには歌っていません。
そう、彼女が今回関心を抱いたのは楽曲そのものとその歌唱法・演奏法だったのです。
おそらくヘッドアレンジ的な事前打合しかなかったと思われますが、ピアノの岩崎さんはじめリズム隊もその試みに果敢にチャレンジしていました。
単に「ソーラン節」や「八木節」をジャズ風にアレンジすると言うレベルではなく、この楽曲の持つもっと深い構造と触れ合おうとしたのだと私は解釈しています。

技術的な話はさておき、実質大正生まれのこの曲の中にある何かが彼女のDNAに潜む何かを震わせたことは間違いありません。
彼女は"TAKEDA ~竹田の子守唄"に続く、自分の内なるジャズを探り当てたのかも知れません。日本人ジャズ・アーティストの多くがいつも格闘している「日本人である自分にとってのジャズ」を。
例えば、彼女のお師匠さんとも呼ぶべき存在の伊藤君子さんの「津軽弁ジャズ」については過去の記事(TAKEDA)でも触れましたが、勿論彼女の今回のアプローチは全くそれとは異なるものです。おそらく今まで誰も試みたことのないもの…

そして、有美さんが選んだのは、同じ福岡(「博多」とは呼びませんので、念の為)の「黒田節」でも、また「津軽じょんがら節」でも、そして「島唄」でもなく、この曲だったのです。

さてしかし、他にも何曲かは彼女が心魅かれた民謡があるようです。
まだまだ「お楽しみ」はこれからです…

6. 参考CD等
正調博多節_c0163399_21484087.jpg
「博多のよかうた よかここち」(08年)
福岡のミュージック・ショップ印藤楽器店の60周年を記念して作成された同店限定のアルバム。正調が付かない「博多節」を始め、福岡・博多を代表する曲が収録されています。同曲は赤坂小梅ヴァージョン。他にも島倉千代子、村田英雄、霧島昇等の歌唱による楽曲も収録。ジャケットイラストは長谷川法世。印藤楽器限定販売ですので、タイトルをクリックして、内容確認の上、直接同社へ連絡ください。
正調博多節_c0163399_23143921.jpg
ザ・民謡ベストコレクション10 九州編
(コロンビアミュージックエンタテインメント 96年)
入手が容易なものの中で、二つの「博多節」が聴けるのはこれ。他にも九州の代表的民謡が収録されています。




注6) 博チョン族
チョンガー状態で博多に在住している人。多くは単身赴任の転勤族。
チョンガーは独身の俗語。朝鮮語の独身男性の髪形「総角」から転じたとされる。

注7) 調弦
3本しか弦がない三味線は調弦も複数あり、代表的なものは3種。
(時には曲の途中でも調弦を変えることもある)
本調子:一の糸に対し二の糸を完全4度高く、三の糸をオクターブ高く合わせる。
(一の糸がCであれば、C-F-Cとなる)  曲の気分は本格的・男性的
二上がり:一の糸に対し二の糸を完全5度高く、三の糸をオクターブ高く合わせる。
(一の糸がCであれば、C-G-Cとなる)  曲の気分は変格的、派手、陽気
三下がり:一の糸に対し二の糸を完全4度高く、三の糸を短7度高く合わせる。
(一の糸がCであれば、C-F-B♭となる)  曲の気分は女性的、優美、悲哀

注8) テンポ・ルバートとバラードそしてカデンツァの関係
テンポ・ルバートをバラードの代名詞のように使うこともあります。
「次、テンポ・ルバートね」と言う具合に。
必ずしも間違ってはいないのですが、そもそもバラードの定義自体が様々ですし、きちんとイン・テンポ(リズム・パターンが入る)で演奏されるバラードもあります。
むしろ、アップ・テンポの曲を含め、所謂ヴァース(予め準備されているイントロ)の部分はテンポ・ルバート(ノー・リズム)で演奏されることが多い。
特にヴォーカル付きの場合は、歌手が思いを込めてヴァースをテンポ・ルバートで歌い、ピアノを主体とするリズム隊はそれを聴きながら、適宜合わせていくパターンが多いようです。この場合、両者の息が合っていることが必要です。
また、リタルダンドと言って、一旦イン・テンポで演奏されていたものが、ラスト近くで再びテンポが落ち気味になるパターンもあります。中には、そのまま無伴奏で主役が最後の思いを「唄い上げ」(カデンツァとも言います。特にクラシックでは)最高の見せ場・聞かせ所にすることもあります。
これも一種のテンポ・ルバートです。


参考文献
正調博多節_c0163399_013394.jpg日本民謡選集 千藤幸蔵・長田暁二編 ドレミ楽譜出版社 08年
民謡新辞典 畠山兼人 編  明治書院  79年
日本民謡辞典  仲井 幸二郎 他編  東京堂出版  72年


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by Eiji-Yokota | 2009-02-07 21:00 | SONG
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